従業員を採用する場合、もちろんその人の報酬額を提示しますが、外資系企業の場合、年俸制で示すことが多いです。例えば、営業職で年俸700万円、残業手当は含まれている、といった内容です。
採用する側としては、これだけの年俸を出すのだから、当然残業手当は含まれているものだ、という認識を持つことが多いでしょう。しかし、これが曲者で、日本の労働法では、管理監督者に該当する社員以外の年俸に残業手当が含まれていると法的に認められるためには、次の3つのテストをクリアしなければなりません。
テスト1:年俸額のうち通常の時間分と残業時間分が明確に区分されているか。 年俸制でも、労基法により給与は毎月支払わねばなりません。毎月の賃金台帳と給与明細書で、通常の時間分と残業時間分のそれぞれの金額が判別できることが必要です。残業時間分の金額がわかるということは、何時間分の残業の対価かがわかるということです。
テスト2: 1の残業時間分は、名称のいかんにかかわらず、実質的に残業時間の対価として払われているか。年齢、勤続年数、業績などに連動するものは危険。
テスト3:何時間分相当の残業を想定しているか
想定している残業時間が、36協定の協定限度時間を超えていないよう配慮することが必要です。
これらのテストをクリアしていない場合は、裁判になった場合に、そもそも年俸には残業分が含まれていないと判断されることがあります。そして年俸額全体が基礎単価となって未払額が計算されるため、多額の追加支払いを命じられることがあります。
年俸制を採用する場合は十分注意してください。